無線LANに関する技術講座(No.1)


●同一回線を共用する技術 〜多元接続(Multiple Access)〜

 ひとつの無線周波数を複数のルータやブリッジが共用する・・つまり半二重(Half Duplex)で多元接続を実現するためには、送信と受信の同期を正しくとる必要がありますよね。もし、この仕組みがいい加減だと同時送信によるパケットの衝突(Collision)や再送信が多発して実効伝送速度は極端に低下してしまいます。実は無線LANだけでなく、普段何げなく使っているイーサネットも同じ宿命を背負っている訳です。


 多元接続を行うための仕組みとしては、以下のよう幾つか考えられる
 訳ですが、これらを組み合わせて使用することが一般的です。

 1.周波数分割多元接続(Frequency Division Multiple Access)
  FDMAと略します。例えばアナログ携帯電話などのように利用者ごとに異なる違う周波数(無線チャネル)を使って通信する方法です。

 2.時分割多元接続(Time Division Multiple Access)
    TDMAと略します。利用者ごとに時間を区切って同じ通信チャネルを共有する方法で、正確に時間軸の同期をとる工夫が必要になります。NTT DoCoMoのデジタル携帯電話や、RTB2400のDynamic TDMAモードがこれです。

 3.符号分割多元接続(Code Division Multiple Access)
    CDMAと略します。スペクトラム拡散通信方式では、干渉波の排除能力が著しく高く、他の利用者の信号と周波数が重なっても、拡散符号系列(一種のパスワードみたいなもの)を変えることによって混信のない通信が実現できます。話題の次世代携帯電話(cdma one)も、この技術を使っているものと思われます。無線LANシステムで、ESS-IDとかGroup-IDとかを個別に設定することでネットワークを分離できるのはこの原理によるものです。

 4.搬送波感知多元接続(Carrier Sense Multiple Access)
    CSMAと略します。同じ通信チャネルを共用する半二重(Half Duplex)通信の古典的な方法で、送信する直前に他の利用者が送信していないかどうか搬送波の有無を調べ、他の利用者が送信している間待ってから、誰も送信していないときだけ送信します。しかし確率的には必ずデータの衝突(Collision)が発生しますので、普通はCSMA/CD(CSMA with Collision Detection)といって衝突検出を行い、衝突が発生したら再送信します。10BASE-TなどのイーサネットやRTB2400のCSMAモードがこれです。(ICOM社の無線ブリッジBR-200も多分この方式の筈です)

    #アマ無線のパケット通信で使うTNCもこの仕組みでしたね。


 このほか、ATMやフレームリレーなどでは位置多重とかラベル多重などの技術も使われるようですが、説明が大変なので詳細は割愛します。(^^;


 結論として、その伝送路に応じて一番効率のよい方式を適宜組み合わせて用いるのがよいと思います。 つまり、パケットの衝突の確率が極めて低い場合は、TDMAよりもCSMAのほうが効率がいいのは元日に行った定量的な実験からも明らかです。:-)


参考になるWebサイト:

多元接続方式(FDMA,TDMA,CDMA)
http://www.nkgw.ics.keio.ac.jp/~sota/research/multiple/node1.html

CSMA/CD方式
http://jops1.daishodai.ac.jp/~taruma/lec98/jnet/slide/jnet9823/sld004.htm

「Dynamic TDMA アルゴリズムの研究」
http://www.root-hq.com/~hmano/p98doc.pdf


     目次     次へ進む