無線LANシステムによる地域イントラネット構築

ネットワーク白河 工藤 秀男
E-mail:hide@srkw.or.jp

1st edition: 1999.10.12
2nd edition: 1999.10.20
3rd edition: 1999.11.11
4th edition: 2000. 1. 3


これまでの経緯

 ネットワーク白河では「常時接続型のイントラネット環境」を実現し、ひいては地域の情報化に貢献することを究極の目的としています。1997年に同軸ケーブルを主体とする基本的なアイディアを立案しました。しかし、イエローケーブルを地域内に張り巡らすという無謀な計画は頓挫し、どうしたものかと考えていたところに無線LANシステムのほうが向こうからやってきたという感じで、まさに「求めよ、されば救われん」の格言通りです。(そんな格言あったっけか?)

 1998年 7月、幕張メッセで開催されたINTEROP'98の会場で見つけたのが、トヨコム社の無線LANシステム(ARLAN640シリーズ)でした。なんとそれまでの無線LANの常識を覆す 1Km(オプションの外部アンテナ使用時)という伝送距離を実現できるというふれ込みだったので、「これだ!これがソリューションなんだ。」と心の中で呟き、頭の中ではイエローケーブルを2.4GHz帯のスペクトラム拡散無線リンクに置き換えたアイディアを想い描いたのです。

 そのとき、実はもう一社の気になるブースにも立ち寄り、資料と社長さんの名刺をいただいてきました。それが、これから大変お世話になるであろうルート株式会社だったのです。ルートさんは、アマチュア無線でのディジタル通信の研究団体であるPRUGの、高速データ通信プロジェクトにも関わっていたことを知っていたため、それとなく「どんな会社かな?」ということで立ち寄らせていただいたのです。(この時は、真野社長とは生憎お会いできませんでした)

 その後10月に入り、三森さん、渡辺(昭)さん、工藤の 3名でトヨコム社を訪問しました。我々の構想を説明し協力をお願いしたところ、デモ機を貸していただけることになりました。また、同じ時期にICOM社ビル間通信ユニット(BR-200)を市場投入しましたので、こちらにも注目しました。なんと言ってもARLAN640に比べて価格が安いということもあり、現在の実験フィールドではBR-200を使っております。

 1998年10月17日の定例総会の席で、両社の無線LANシステムのデモを行ったのが伝送実験の始まりでした。このときは、三森さんの自宅にダイアルアップルータを設置してBR-200無線ブリッジ 2台を使用し、関の森公園内の都市交流センターまでの約700mをリンクしました。樹木に遮られたような経路でしたが何とか接続することができ、夜間から雨天になって若干パケットロスが増えましたが、それなりの成果を得ることができたと思います。

 以後、有志の方々と一緒に、また多くの方々にもご協力いただきながら伝送実験を進めて参りましたが、白河市当局はいまいち反応が良くない反面、アサカインターネットさんとルートさんが正式に我々の「白河地域イントラネット構想」に全面協力の方針を打ち出すなど、今後の展開に明るい兆しが見えてきております。また、マスコミ各社の取材を受けるなどの動きもあり、今後は一般市民やほかの団体などからも注目されそうです。:-)

なお、プレゼンテーション資料伝送実験レポートが以下のURLにあります。

'98プレゼンテーション資料:http:/www.srkw.or.jp/~hide/intra/intranet.ppt

無線LAN伝送実験レポート:http:/www.srkw.or.jp/~hide/intra/jikken.htm

 

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    [Fig-1:実験中のシステム系統図]        

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      [Fig-2:無線系のトポロジィ]         


地域イントラネットとその価値

 振り返れば1995年12月に設立した「白河LAN」基本理念が、まさにこの地域イントラネットの発想そのものだったように思います。当時誰しもがインターネットに繋ぐことに気を取られ、内側のネットワーク(LANやイントラネット)の価値に気付く人は殆どいなかったのです。私たちは、その以前からアマチュア無線の電波を使って無線ネットワークを構築し、半二重通信の1200b/sという超低速ながらも常時接続の環境を経験しておりました。その中で、無意識のうちにその価値を認識し、無線イントラネットの底辺技術に磨きを掛けていたような気がします。:-)

 アマチュア無線を離れて以来、今までは物理的な環境の制約からダイアルアップでインターネット越しにしか接続できませんでしたが、最近この辺りの事情が変わって来ております。つまり、2Mb/sという高速度で1〜5Kmという長距離伝送が可能な無線LANシステムが比較的安価に入手できるようになったからです。この無線LANを使えば、直接ユーザのコンピュータ同士を接続でき、しかも画像や音声など高負荷のトラフィックにも耐えられる回線を持つことができるという画期的なものになるのです。しかもデフォルトゲートウェイ越しにインターネットともシームレスに繋ぐことができるので、大変使い勝手のよいインフラになると思われます。

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[Fig-3:地域イントラネット概念図]

 このインフラストラクチャをどう活用していくのかを考えることも、大変重要なことであります。思いつくままに書き出してみますと、大体以下のような応用が考えられます。

ユーザ間のコミュニケーション手段としての利用

ネットワーク資源の共有によるコラボレーション

災害時の遠隔監視・非常通信用回線としての利用

医療情報・在宅介護支援システムへの応用

教育機関(小中学校・高校)と家庭との連絡用

行政機関と市民との双方向ネットワーク構築

上記のほかにも何か応用できそうなアイディアがありましたら、ぜひご提案願いたいと思いますので、その節は工藤(hide@srkw.or.jp) までご連絡いただけると幸いです。:-)

 これらを実現して行くには、到底私たちだけの力ではできません。白河医師会の医療情報委員会に所属する医師や医療関係者の方々に働きかけたり、小中学校・高校など教育関係機関の先生や白河市教育委員会の有志の方々にも働きかけ、さらには白河市当局にも働きかけを継続して行きたいと考えています。


何故、無線LAN?

 このようなイントラネットを構築するには、以下のような手法が考えられます。もちろんこれらを併用したシステムも当然あり得ます。:-)

専用線(HSD, DA, xDSL)

ケーブルテレビ(同軸/光ファイバ)

無線LAN(2.4GHz SS通信方式)

この中で、ケーブルテレビは他力本願で実現の可能性は殆どないと言えます。:-< とすると、専用線と無線LANが選択肢として残る訳ですが、ランニングコストの点でも、また回線設定の自由度の大きさの点でも、無線LANに軍配を上げざるを得ないのです。しかし、安定性や信頼性の面ではやはりディジタル専用線は捨てがたいものがあり、将来はDAやxDSLなどの専用線と無線LANシステムを組み合わせたハイブリッドなシステムになっていくものと考えています。


人と人との繋がり(ヒューマン・ネットワーク)

 思えば、ここまで漕ぎ着けるまでにいろいろな方々との出会いがあり、交流があってこそ実現したものと考えております。そして今後も更なる出会いと交流が待っている筈で、わくわくするものがあります。:-) とくに1998年10月、トヨコムさんからのご紹介で情報交換を始めさせていただいた、長野県・安曇村の辺境のMac使いこと岩田さんとの出会いは特筆すべきものでしょう。彼は自力で無線LANによる地域イントラネットを構築し、村内のペンション同士や学校、役場などを繋いだ「安曇村CyberNetwork」を作ったのです。これを最初知ったときは、大変な衝撃を受けました。まずは「しまった、先を越された!」という失望感。そして「私たちと同じようなことを考えている方がいて、お手本がそこにあるぞ!」という期待感の入り交じった複雑なものでした。:-)

 また、アサカインターネットさんやルートさんが正式に協力企業として名乗りを挙げられたことも、工藤が個人的に築き挙げてきた人間関係に支えられていると言っても過言ではないと思います。だからと言って、何も私だけの力では決してなく、白河LANネットワーク白河の活動を通して出会った多くの仲間達の支えや協力があってこそ、ここまで熱意を持ち続けてこれたのだと感謝しております。これからもこの素晴らしい仲間達と一緒に、益々信頼関係を強化しながら目標達成に向けて鋭意努力していくつもりです。


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